COLUMN

2025.07.28

なぜ企業価値向上が今必要なのか?
背景と対策を解説

  • 企業価値向上

なぜ企業価値向上が今必要なのか?背景と対策を解説

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2023年3月、東京証券取引所はプライム市場とスタンダード市場の上場企業に対し、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの状況を改善するため、資本コストや株価を意識した経営を促す要請を行いました。このような投資環境の変化に加え、経済環境の変化や社会環境の変化が重なり、昨今、「企業価値向上」が企業に求められるようになっています。

企業価値向上が叫ばれる背景について

企業価値向上が叫ばれる背景には、以下の5つの要因が挙げられます。

1つ目が「投資家の視点の変化」になります。
株主は資本効率の高い企業を評価する傾向が強まり、それに伴い、企業は資本コストを意識した経営を求められています。また、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に配慮した企業が長期的に価値を生むとされ、非財務情報も企業価値に直結するようになりました。

2つ目が「グローバル競争の激化」になります。
海外企業との競争が激しくなる中で、競争優位性の確立や持続的成長戦略が求められています。特に日本企業は、低成長・低収益体質からの脱却が課題とされており、企業価値向上が経営の最重要テーマとなっております。

3つ目が「資本市場からの圧力」になります。
アクティビスト(物言う株主)の台頭により、企業は株主価値を意識した経営を迫られています。そして、東京証券取引所も2023年以降、PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への改善要請を強化しており、企業価値向上は上場企業にとって喫緊の課題です。

4つ目が「企業の持続可能性と社会的責任」になります。
昨今、気候変動や人権問題等、企業が社会課題にどう向き合うかという取り組み姿勢が評価される時代になっています。サステナビリティ経営を通じて、社会的信頼と長期的価値創造を両立することが求められています。

5つ目が「人的資本経営の重要性」になります。
人材を「コスト」ではなく「資本」として捉える考え方が広がり、人的資本の開示や従業員エンゲージメントの向上が企業価値に直結するようになっています。

これらの背景から、企業は単なる利益追求だけでなく、中長期的な価値創造を重視した経営にシフトしています。

企業規模別の企業価値向上に向けた課題について

大企業(上場企業やグローバル企業)は、東京証券取引所や海外投資家から「資本効率を高めよ」「ガバナンスを強化せよ」といった強い要請を受けています。特に、PBR(株価純資産倍率)1倍を下回る企業は、資本の使い方や事業の選択と集中を見直す必要があります。また、ESGや人的資本の情報開示にも高度な対応が求められており、経営の透明性と説明責任が問われております。

中堅企業(非上場)は、地域経済の縮小や人材不足、事業承継といった課題に直面しております。一方で、上場やM&Aの対象として注目されることも多く、企業価値を高めることで企業が取り得る選択肢が広がります。成長分野への投資や財務の見える化、組織力の強化が重要なテーマです。

中小企業は、人材や資金、情報といった経営資源が限られている中で、いかに収益性を高め、持続可能な経営を実現するかが課題です。価格競争に巻き込まれがちな状況下で、自社の強みを活かしたブランドづくりや、デジタル化による業務効率化が企業価値向上の鍵となります。

企業価値向上に向けた対策、アプローチポイントと手法について

企業価値を高めるためには、単に利益を上げるだけでなく、企業の持続的な成長や社会的信頼を築くことが重要となります。以下に、企業価値を高めるための対策・アプローチポイントとして重要な項目を6つ挙げます。

1つ目が「財務体質の強化」です。
企業価値の基盤は、健全な財務体質にあります。利益率を高め、資本を効率的に使うことで、投資家からの企業への評価が向上します。例えば、収益性の低い事業を見直したり、資本コストを意識した経営を行うことで、ROEやROICといった指標の改善につながります。また、適切な配当や自社株買いなど、株主還元の方針も重要となります。

2つ目が「事業ポートフォリオの最適化」です。
企業が持つ複数の事業の中で、どこに資源を集中すべきかを見極めることが求められます。成長性の高い分野に投資を集中させ、収益性の低い事業からは撤退するなど、戦略的な選択と集中が必要です。M&Aや業務提携を活用することで、外部の力を取り入れながら成長を加速させることも可能となります。

3つ目が「人的資本の活用」です。
人材は企業の最も重要な資産です。社員のスキルを高め、働きがいのある職場をつくることで、組織全体の生産性が向上します。最近では、人的資本の情報開示も求められており、教育・研修制度や多様性の推進、エンゲージメント向上施策などが企業価値に直結するようになっています。

4つ目が「ESG・サステナビリティへの対応」です。
環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に配慮した経営は、長期的な企業価値の向上に不可欠です。たとえば、CO₂排出量の削減や再生可能エネルギーの導入、社外取締役の活用によるガバナンス強化などが挙げられます。これらの取り組みは、投資家や消費者からの信頼を高める要因となります。

5つ目が「ブランドと顧客価値の向上」です。
企業のブランド力や顧客からの信頼は、無形資産として企業価値に大きく影響を与えます。顧客満足度を高めるためには、製品やサービスの品質向上に加え、デジタル技術を活用したマーケティングやカスタマーエクスペリエンスの改善が効果的です。

6つ目が「資本市場との対話の強化」です。
企業は、投資家や株主に対して自社の戦略や価値創造の取り組みをわかりやすく伝える必要があります。IR活動の充実や統合報告書の発行、資本コストを意識した経営方針の説明などを通じて、企業の透明性と信頼性を高めることができます。

これらのアプローチは、単独で行うのではなく、相互に連携させることでより大きな効果を発揮します。自社に足りない項目や伸ばしたい項目を分析のうえ、対外的に発表して取り組んで結果を出していくことが企業価値の向上につながっていきます。

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